編集者がすすめる
「十勝の食と温泉」
長崎県生まれ。熊本大学卒業後、北海道へ移住。2018年、帯広市ソーゴー印刷株式会社へ入社。雑誌『スロウ』編集者兼カメラマンとして活動。2020年、ウェブメディア「スロウ日和」立ち上げ。2021年、退職し「たまたま舎」起業。ライター、編集、カメラマンとして活動する。2022年8月より洞爺で書店を構えるべく準備中。
一般社団法人ドット道東…点がつながる。道東のあたらしい輪郭になる。北海道のひがし側、道東(十勝、オホーツク、釧路、根室)を拠点に活動するクリエイターによって一般社団法人ドット道東は、2019年に創業しました。道東内外に点在するパートナーと共にプロジェクトに応じてチームを編成しクリエイターはもちろんのこと、ステークホルダーとなるDOTO-NETの企業や自治体とも協業し、企画プロデュース、地域ブランディング、情報発信、求人メディア運営、ローカルデーターベースを用いた地域の課題解決をおこないます。
まず、晴れる日が多い!「十勝晴れ」という名前があるほど、晴天率が高いんです。少し心が沈みがちになる冬にほとんど晴れているのも、推しポイントです。それゆえか、人柄も明るくてさっぱりしている人が多い印象。
そして、もう一つ好きなのが、「ほどよく都会で、ほどよく田舎」なところ。たとえば人口15万人を擁する帯広には、屋台街の北の屋台や全国規模のチェーン店など、さまざまな飲食店があります。そんな都会の部分も楽しめながら、1時間も車を走らせれば絶景が広がる場所へも行ける。そのときの気分で、楽しみ方を選べる。そんな過ごし方の選択肢の多さも十勝の魅力かなと思います。
私は編集者、ライターという仕事柄、十勝のおすすめの場所をよく聞かれます。あまりに聞かれる回数が多いので、すでにいくつかメモして定型文を作成し、コピーして回答しているくらい。
十勝は「フードバレー十勝」と呼ばれるほど、食の一大生産地です。食がおすすめであることは言わずもがな、個人的にお勧めしたいのは温泉の魅力であったりもします。今回は十勝の食と温泉の初級編をご紹介します!
かっこう料理店
十勝に大切な人が訪ねてくるとなったら、まず連れて行きたいのが更別村のかっこう料理店。大規模な十勝らしい農村地帯を通り抜け、柏の森に佇む一軒家に辿り着けば、ペットとして飼われている羊が迎えてくれます。主に更別村や十勝産の食材を使っており、さまざまな野菜の旬の味を生かしたお料理を楽しめるかっこう料理店。お料理が運ばれてくるたび、盛り付けや野菜の美しさに感嘆の声が止まりません。
完全予約制なので、混み具合を気にせずゆっくり過ごせるのもうれしいです。大きな窓の外に広がる自然を見ながら、大切な人とおいしいごはんを味わえます。季節ごとにまるでお料理が変わるので、四季ごとに訪れるのが私の楽しみ方。十勝在住の私にとって、かっこう料理店を訪れるのは季節の特別な行事になっています。
要予約なので、営業スケジュールを確認してから旅程を組んでくださいね!予約するのを忘れずに。
かっこう料理店
料金:やさいごはんコース···1800円、とかちごはんコース···2300円
定休日:不定休
電話番号:0155-52-5180
住所:更別村字勢雄317-8
toi
「十勝には、toiがある」と、声を大にして言いたくなるハードパンの名店、「toi」。十勝で採れたBIO小麦を自家製粉し、新鮮な小麦粉を使い薪窯パンで焼いています。丘の上の、小麦畑の隣にあるロケーションも最高です。
toiのパンは食事の傍にあってほしいパン。主張せず、「色がない」という色を持った影の名脇役です。といってもあまりのおいしさに、私の中ではいつも主役。
正直に言うと、北海道に来るまでハードパンとはあまり馴染みがありませんでした。でもこのパンに出会ってから、ハードパンのおいしさに開眼。道内各地のパン屋を回りました。けれどやっぱり、「十勝には、toiがある」。toiに帰ってきてしまうのです。帯広から20分ほど車を走らせれば着くのもうれしいポイント。この味が楽しめるのは、住んでいるからこその幸せです。
すぐに食べないパンは冷凍保存するのがおすすめなので、旅の終盤に買って帰るのがおすすめです。店頭にはハードパンを使ったサンドイッチなども並んでいるので、ドライブの途中で小腹が空いたときに食べるのもおすすめ。コーヒーなど飲み物のテイクアウトもありますよ。
toi
定休日:月・火曜日
電話番号:0155-32-9177
住所:音更町字上然別北6線23-4
elephant in the room
”センス抜群の気のいい兄ちゃん”、幸太さんが営むカレー屋「elephant in the room」。本場のカレーを味わえることはさることながら、店内で流れている音楽に耳を傾け、雑貨を吟味して、幸太さんとお話しする。そんな時間も含めてエレファントの楽しみ方。
幸太さんが旅の途中で買い付けしてきた古着やアクセサリー。十勝ではこの店にしか置いていないという独立系出版社の雑誌。「全財産を惜しみなく注ぎ込んでいる」という大量のレコード。幸太さんという人の魅力が詰め込まれた店を求めて、札幌や遠方からもお客さんが訪ねてくるほどの人気店です。
幸太さんは人と人をつなぐのがとても上手な人。私もこの店を通して、たくさんの素敵な人と出会いました。「旅は道連れ」のような出会いが、きっとあるでしょう。
かわいいツンデレの飼い犬・シヴァに会えたらラッキー!お昼時は混み合うので、もし幸太さんとゆっくり話したければ、昼過ぎに訪れてみてください。「今月は飛ばしすぎた」などの理由でお休みすることもあるので、インスタグラムから営業スケジュールの確認をお忘れなく!
ポンチセ(北の屋台)
十勝の食の魅力を存分に味わいたいあなたに勧めたいのが、「北の屋台」のハシゴ酒です。帯広の中心部に20軒ほど屋台が連なるこの場所では、十勝や道産の食材を主に使ったリーズナブルな屋台飯が味わえます。中でもポンチセはアイヌ料理を食べられる珍しいお店というだけあって、道外から来る人にオススメしたい場所です。まず味わってほしいのは、豚骨と塩だけで出汁をとったポネオハウ。店主の純子さんの思い出詰まった一品です。料理にまつわるエピソードは、ぜひ屋台で聞いてみてくださいね。
(こちらはアイヌの猟師が仕留めた新鮮な鹿肉)
ムニニシトやチポロイモなどのアイヌ料理も美味ですが、十勝の枝豆やジャガイモなどを使った定番の居酒屋メニューも、目を見張るほどのおいしさです!
北の屋台の好きなところは、観光客と地元客の割合が半分くらいなところ。「どこから来たの?」という会話に始まり、最後は一緒に酒を酌み交わし笑い合う。北国に暮らす人たちの、温かさを存分に感じられるこの場所が大好きです!
ポンチセ(北の屋台)
定休日:水曜日
電話番号:080-6077-3763
住所:帯広市西1条南10丁目7
中札内美術村
十勝に暮らす人にとって、暮らしに溶け込んでいる老舗菓子店といえば、六花亭です。帯広の街中にも趣が異なる路面店がたくさんあり、それらを廻るだけでもとても楽しい。けれどせっかく十勝に来たのなら、ぜひとも足を運んでみてほしいのが六花亭が営む私設の美術館、中札内美術村です。敷地内には六花亭と縁のある作家の美術館がなんと7ヶ所も!
美しい柏の森を歩きながら、ゆっくり巡る時間そのものが特別な体験に。私が特に好きなのは、相原求一朗美術館です。晴れの日だけではない、曇りの日にだけある静かな北国の美しさ。住んでいたら少しずつ感じられるそんな側面を描いた作品に触れられます。
歩き疲れたら六花亭直営のレストラン「ポロシリ」にて、バイキング形式の昼食を。お外の席が空いていたらぜひそこで、柏の森を見ながらゆっくりランチを。先日初めて六種類の豆が入ったグラタン(写真上)を食べたのですが、あまりのおいしさに驚きました。前述したかっこう料理店の近くにあるので、組み合わせて最高の1日を過ごしてください。
中札内美術村
料金:入館無料
営業日:2022年4月29日〜10月10日の土日祝、GW(4月29日〜5月8日)、夏期(7月30日〜8月16日)のみ営業
電話番号:0155-68-3003
住所:中札内村栄東5線
アサヒ湯
食べ物、スウィーツ、景色…。魅力にあふれた十勝ですが、隠れた真の魅力は温泉だと思っています。「隠れた」と言うのは、十勝に来るまで温泉が良いことは全く知らなかったから。そして、その魅力をあまり知られていないようにも思うのです。帯広市内にもたくさんの温泉があり、それぞれ銭湯価格で入れること。トロッとしたモール温泉の泉質が最高なこと。これらは、住んでみて初めて知った魅力です!初めて十勝を訪れた人には、ぜひとも温泉に入ってもらいたいです。
中でもアサヒ湯は、泉質を最重視する人にこそ入ってみてほしい名湯。「新鮮なお湯」ってこういうことなのかと、きっと思うでしょう。訪れるのは地元客が多いので、世間話に耳を傾けるのも楽しみの一つです。夜、温泉から上がる時の「おやすみなさーい」という地元民の掛け合いにいつか混ざってみたいなぁというほのかな夢を抱いています。
帯広駅から歩いて行くには少し遠いですが、街中から近いのもポイントです。
アサヒ湯
料金:大人450円、子供140円、幼児70円
定休日:元旦
電話番号: 0155-24-1933
住所:帯広市東3条南14丁目19
グランヴィリオ温泉
温泉で長風呂しながら友人と話す時間が、何より大好きです。そんな時間を過ごすのにもってこいの温泉が、幕別町にあるグランヴィリオ温泉です。タオルなどのアメニティも揃っているので、手ぶらで行けるのも魅力です。浴槽の種類が多いのもうれしい。さらに、20時を過ぎると入浴料が少し安くなります。
私が好きなのは、露天風呂にある浅めの浴槽です。腰までしか高さがないので、半身浴をしながら長時間浸かることができます。露天風呂の外に広がる庭園を見ながら、友人と語る。帯広の夜景を見ながら帰る景色も含めて、スペシャルな時間になるでしょう。ちなみに数千冊の漫画が置いてある休憩スペースもお気に入り。ちょっと古めの懐かしい少女漫画がたくさんあります。温泉と休憩スペースを往復しながら、肌と心を潤わす。仕事に疲れたときの週末は、そんなお籠り休日を過ごして乗り越えていました。
グランヴィリオ温泉
料金:大人/平時950円19時以降750円、子供/常時520円
定休日:なし
電話番号:0155-56-2121
住所:幕別町字依田384
然別湖畔温泉ホテル風水
帯広から1時間ほど車を走らせれば、郊外の素敵な温泉もたくさんあります。どこを挙げるか悩んだ結果おすすめしたいのが、ホテル風水の温泉です。温泉に面した然別湖自体が十勝の大きな魅力であることからここを挙げました。私は然別湖が大好きで、本州に住んでいた頃からここを目指して何度も来道していました。特に好きなのは、針葉樹の香りが立ち込める北岸野営場の雰囲気。夫は北米で何度もキャンプしているのですが、「ここはアラスカと同じ匂いがする」といつも言っています。もし本格的で手付かずな自然が好きな方であれば、全力でオススメしたいキャンプ場です。
山頂から湖を望める白雲山の登山や、カヌーなどの自然アクティビティも楽しめます。汗をかいた後はぜひ、湖に面したホテル風水の温泉へ。湖の水面とつながっているかのような露天風呂。まるで湖に浸かっているかのような気分になれます。休日にホテルのレストランで食べられる食事と温泉のお得なセットもおすすめです。
ちなみに道民の方はぜひとも、公式LINEのお友達になることをオススメします!なんと毎月、入浴料金が半額になるクーポンが送られてくるのです!半額ですよ!使わない手はありません。
然別湖は、北海道の中で最も標高の高い場所にある天然湖です。熱めのお湯でガンガン温まってホテルを出た後、ひんやりとした山の上の空気を吸えばもう、完全に”整う”ことができます。そういえばホテル風水では、湖畔で楽しむテントサウナが新たにスタートしたそう。こちらも試してみたいです。
さらに、温泉好きなあなたへ朗報です。台風のため通行止めとなっていた糠平湖と然別湖をつなぐ幌鹿峠が2020年に開通しました。これで、然別湖から糠平湖へ1時間以内に行くことができるようになりました!つまり、ハシゴ温泉が可能なのです!
糠平温泉は北海道のなかでも歴史ある温泉街。たくさん日帰り温泉があるので、好みによって選んでくださいね。私は「中村屋」、「糠平館観光ホテル」が好きです。
終わりに
以上、十勝在住編集者・森髙まきがおすすめする十勝の食と温泉でした。
実は、仕事の都合で8月中旬に十勝から引っ越すことになりました。このコラムを書いていて、改めて十勝の素晴らしさを再確認すると共に、十勝を離れることの寂しさでいっぱいになりました。特に、モール温泉…君と離れるのが何より辛い!
書き足りないディープスポットはまだまだたくさんあるので、今回は十勝の入門編としてぜひ廻ってみてくださいね。十勝の沼、一緒に楽しんでいきましょう!